Story #5: Custom Orders Forms オーダーフォームには、ビーチバムたちの情熱がたっぷり詰め込まれていた。

Birdwell

ビーチトランクスの話

by Rin Tanaka 

 

  大きい奴らに食われないようにするためには…….。1970年、<バードウェル>はそれまでサンタアナの自宅兼工場から、ついに近所の工場へ移転しました。1965年から2代目社長に就任したヴィヴィアン・リチャードソンは会社が着実に成長していることに満足感こそあったでしょうが、しかしビジネスの世界に“安泰”など存在しないことは充分に理解していたはずです。なぜなら1960年代中期〜1970年代は“ショートボード革命”の到来によってサーフィン業界が急成長を遂げた時代で、カリフォルニア、ハワイ、そしてフロリダから続々とサーフブランドが登場していたからです。<Hang Ten>、<OP>、そして業界内で最初に「売上、一億円」を達成した<Lightning Bolt>などサーフ・ファッション・ビジネスは大いに盛り上がり始めていました。

 一方、1961年に創業した<バードウェル>は依然としてファミリービジネスのままで、大手ブランドがサーフトランクスの大量生産・販売し始めたことはかなり脅威だったはずです。それでも「サーフトランクス専門」の<バードウェル>には強みがありました。それは小さいブランドゆえに細かいカスタムオーダーが可能だったことです。そんなマニアックでニッチなビジネスにも沢山の需要があるのは、アメリカが人口の多い、しかも豊かな国だからでしょう。

 幸いにも雑誌『サーファー』の広告を見たアメリカ中のサーファーたちから“こだわり”たっぷりのオーダーがどんどん届くようになりました。どれも細かいイラスト入りばかりで、しばしばバーディーの似顔絵まで添えられているものもありました。そんな情熱的なオーダーが届くと、<バードウェル>の職人たちも気分が盛り上がったはずです。そしてアメリカ中から届いたユニークなオーダーはそのまま<バードウェル>の個性となり、ブランド力をさらにアップさせてゆくことになります。(次号に続く)

 

新工場でスナップボタンを打ち込む男性の職人さん。<バードウェル>が工場に移転したばかりの1970年頃に撮影されたようです。


移転した工場には資材用の大きなストックルームも設けられました。右手に見えるのは恐らくトランクスのパターン(型紙)でしょう。

 

<バードウェル>のアーカイブ資料として保管された当時のオーダーフォームをいくつか紹介しましょう。まず1968年5月31日のオーダーは、スワッチ(布きれ)付きで細かく指示が描かれています。どうやら女性からのオーダーのようです。


1968年7月10日のオーダーでは、#302をベースにグリーンとイエローのツートン仕様がリクエストされています。当時の$10.35は決して安くはないはずで、今日の紙幣価値に換算すると$50くらいでしょうか。

 

こちらはジャケットとトランクスのダブルオーダーです。細かいリクエストが沢山描かれていますが、どんなカスタムオーダーでも可能なのが<バードウェル>の強みでした。


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